光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

五月尽

方舟の遠き櫂の音明易し 短夜のメールに離愁ありにけり 或る楽章沖より聴こえ五月尽

夜の新樹

耳ふたつ黄泉から還り明易し ホルンより溢れ拡がり夜の新樹 鳴き砂を頭蓋に泣かせ五月尽

紙魚

紙魚走る我が青春の一頁 紙魚泳ぐ書海に生るる神話かな 紙魚光る月下の原色美女図鑑

明易し

五月雨の奥より黒き挙手の列 追憶の溺れてゐたる夜の新樹 澄みとほるたましひとなり明易し

短夜

蟻地獄孤独の欠片嚥みにけり 短夜の緋色の椅子にゐる孤独 短夜の止り木に聴くボブディラン

蟻地獄

異界かな逢魔が刻の蟻地獄 蟻地獄虹の断片転がれり アビー・ロード夢見てゐたり蟻地獄

卯波

月涼したましひ沍ゆる一行詩 短夜の夢追ふてゐる赤エンピツ 淋しさは個と孤越え来る卯波かな

麦秋

パナマ帽ホームの端に黙礼す 淋しくて日除に影を消しにけり 麦秋やその日の空が青くあり 虚空五月ウルルは朱き方舟に 夏霧やレタスの平原渺茫と

五月

粽解く妻は中学同級生 新宿の夕暮れ青き五月かな 顎鬚の青きひかりや聖五月

パナマ帽子

木の椅子に立ちこめてゐる青い霧 薫風や老人の吹くハーモニカ パナマ帽日暮れの駅に佇にけり

滴り

滴りや生きとし生けるものの声 淋しくて日除に影を消しにけり ジャスミンや地下のBARからボブディラン

五月虚空

1Q84五月虚空の青き月 病棟はくすりの匂い躑躅咲く 高層の喫茶に溢るる五月の陽

聖五月

聖五月神の欠片を拾ひけり 聖五月真赤に泥む地平線 クリムトの金の接吻聖五月

ジャスミン

ジャスミンの香の叛乱に討たれけり 好い奴になりたくて買ふ夏帽子 梢(うれ)も日に光りをりけり椎若葉

明易し

「Free as a Bird」流れて明易し 短夜やIMAGINE何度も聴いてみる 青春の我が一ページ紙魚走る

母の日

母の日やわが裡にある擦過音 母の日やハッカのドロップ出てこなゐ 母の日の星ひとつ産む銀河かな

蝙蝠

蝙蝠の翼で昭和から戻る 紅灯の海で穴子を釣つてゐる 流人大陸光と影の滴れり

葉桜

葉桜やわかりあえないひとばかり 葉桜の向かう青い月欠ける 葉桜や未来の記憶剥落す

昼寝

昼寝から覚め今生の眩しさよ 真先に穴子の貌は忘れたり

五月晩秋

聖五月明朝体の撥ね光る 夕焼けの大地アボリジニ笑ふ 五月晩秋エアーズロックは方舟に

修司忌

ひ・と・りとは淋しき鳥よ寺山忌 風切羽拾ふ岬や寺山忌 修司忌のうかつに入るBOOK・OFF 修司忌やひ・と・りは孤独にはあらず

滴り

アボリジニの聖地したゝる日の出かな ものに名の無き時代あり夏つばめ 滴りや化石の耳に一行詩

ウルルにて

箱船とおもふウルルの夕焼かな 地球の芯掴んでみたく夏に入る 夕焼けの大地愛憎充満す うかつにも晩秋に居て五月来る 五月一日キャンベラの森彷徨へり