光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

蛍火

蛍火やふたりの隙間往還す 空の奥海となりたる蛍の夜 蛍火の奥に狂気となりゐたる

薄荷水

薄荷水有ります島の純喫茶 色つきの女とジンと薄荷水 欠伸してあの時の顔薄荷水

夕焼け

懸命に母の水脈追ふ夕焼かな 夕焼背に駆けて往きけり聖家族 あやかしを秘め蛍火の往還す

午後三時涼しき風の生れにけり 在りし日の含羞仄か薄荷水 蛍飛び此の世は深き黙の海

蝿叩き

海の日の小児が踏みし貝の肉 淫夢より醒め手にしたる蝿叩き 追憶の溺れたる夜の海涼し

角川春樹主宰 五句 父の日の遠くなりたる日暮かな 油絵の色を重ねて夏といふ 万緑のなかや非在の神がゐる また今日の日暮に染まる父の日よ たましひを天に還して麦の秋

炎昼

緑陰や白き天使の憩ゐたり 麦秋の彼方に睡る骸かな 炎昼や白い時間を持て余す

父の日

滴りや生きとし生けるもののこゑ /秀逸 カーニバル果つる短夜抱き明かす/佳作 父の日の青き夕べとなりにけり/秀逸 父の日の胸底にある渇水期 父の日の山の彼方の没日かな 父の日の遠き海鳴りありにけり

月下美人

水無月の雨の言葉に撃たれけり 淫夢より醒め身震いす青蜥蜴 月下美人ダイキリを飲む時刻なり

蛍袋

蒼天の風に触れたり朴の花 蝸牛かなしむために生きるなり 蛍袋青き夕べを灯しけり

海霧

うろづくの頃の記憶や海霧の中 海霧を来て明日の記憶に躓けり 海霧の沖タイタニックの眠りをり

桜桃忌

孤独とはひ・と・りにあらず桜桃忌

床みどり

一匹は彼の日の自分紙魚走る 歳月てふ音色ありけり床みどり 桜桃忌玻璃のむかうは青もみじ

麦秋

麦秋の無人駅から日暮れけり 麦秋の日暮の駅に降りにけり ホームから生家みてゐるパナマ帽

あじさゐ

異界へとふっと繋がる蟻地獄 人攫いふっと手を出す蟻地獄 あじさゐの海に少年溺れけり

泰山木の花

天にこゑ泰山木はひらきたり たましひを放ち泰山木咲けり 泰山木の花は幼き日のままに

洗ひ

六月や狂いだしたる羅針盤 滴りやジ・エンドまであと十年 削がるもの削がれ眩しき洗ひかな

蝸牛

街騒に金魚の闇が揺れだしぬ 夕暮れの芭蕉が音叉となつてゐる 蝸牛哀しみばかり背負ゐけり

葉桜

葉桜の空より聴こゆ或る楽章 石のこゑ水底に生るる仲夏かな 善人になりたくて買ふ夏帽子