光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

政権交代

秋蝶の逡巡したる投票所 星月夜百八十度憤怒の眼 集まって水澄む国となりたるか

水の秋

葛西橋ゆらしていたる秋の潮 ゆるぎなき一行詩たり水の秋 渡河の日を伏して待ちけり天の川

予知夢

非常ベル鳴りて瑞穂の八月尽 秋蝉や昭和の母が泣きじゃくる

かなかな

かなかなや過去の誰かを待つてゐる かなかなのこゑにその日の蘇える

八月尽

神がもう影となりゐて八月尽 愛渇くまで沖にゐて八月尽ひぐらしや父の記憶がない家庭

つくつくし

つくつくし脳の地平を進軍す慟哭と嗚咽の狭間つくつくし

ひぐらし

ひぐらしや記憶の底の赤き椅子 空蝉の時間のかたち蹴つてみる ひぐらしや掬ひきれないもの数多

ひぐらしや沖に砲声骨の音 蜩の虚空に零す嗚咽かな ひぐらしや鈍し緋色のペンダント

墨田吟行句会(深大寺)

とんぼうの大音響に番ひけり 処暑の日のなんじゃもんじゃの木に雫 山門に秋蝶吹かれ入りにけり スカートの下に残暑のありにけり 水音にまだ緋の薄き赤とんぼ ひぐらしの声降りしきる大樹かな ユーモアで掬ふ残暑でありにけり 棘のある言葉飛び出る残暑かな …

秋風

ロンジンの懐中時計秋めけり ポロポロと言の葉落ちる秋暑かな人間の髄秋風の卓の上

夜の秋

なやましきひとのあつまりあきにいる 想ひをば追伸に記す夜の秋 鉄錆の烈しく匂ふ夜の秋棘のある言葉飛び出る残暑かな 秋暑し依怙地に硬き薔薇の棘 風船葛揺らしたましひ昇りけり

蝉の殻

たましいのひとつのかたち蝉の殻 手にとれば魂転びでる蝉の殻喪失といふ空間や蝉の殻

鳥渡る

澄みきつて水の底ひに石のこゑ 透明な球体延ばし鳥渡る 鳥渡る母逝きし日の海の色

解夏

主なき椅子棄てられし解夏の海 一行詩ほどのゆらぎの秋の蝶 秋蝶の触れゆくものに触れにけり

煮え滾る心の底に秋立てり 澄みきつて天蓋忘れゐたりけり

「河」

角川春樹主宰作品 血と骨のさびしい国旗終戦日 すばる忌の夜のこころに触れてをり 戦争の語り部のゐる夜の秋 今日といふ涼しきほどの遠くに父 炎天を来て炎天に帰りけり 天の川渡るに櫂のなかりけり 今日の出句 折鶴の黙降り積もり八月尽 主宰特選 翠秀逸 広…

終戦日

沖にまだ砲声八月十五日 かなかなのその日虚空へ還りけり 折鶴の黙降り積もる終戦日

健次忌

健次忌を晩夏のジャズで修しけり 新宿の晩夏がジャズになつてゐる 八月の死者の赦しを請うてゐる

遊び

フォルクローレ水底に山椒魚 法師蝉オリーブの木から落下 神保町秋の四角い空晒す

秋風

秋風や摩天楼から月の船 紅灯の海に初風月の船

秋の風

(虎落笛結社の秋) 矜持なき人に疎まる晩夏かな 耄碌と云へば云へそう秋の風 表紙より中身が大事秋立てり

秋の蝶

みんみんのみんのひとつに撃たれけり 生と死の螺旋犇めく銀河かな ちちははのゐる天涯へ秋の蝶

ナガサキ

八月や折鶴の黙また積もる 黒き椅子並ぶ広場の溽暑かなナガサキの空が遊び場赤とんぼ ナガサキの時計十一時二分なり

すぎなみ詩歌館 句会

幻戯山房八月の草匂ひけり 青柿山房涼しき水の音走る 逝く夏を石売るひとと惜しみけり 吐く息のひとつひとつに秋立てり沖にまだ大和の砲声晩夏光 身の内に十字架重き溽暑かな 漆黒のピアノ据えられ涼新た

大原麗子死す

マドンナの死はあっけらかん天道虫 マドンナは吉永小百合鰯雲水槽を泳ぐ女をみてゐたり鼻の日に大原麗子の訃報あり

カンパニュラ

カンパニュラの恋てふ風は透き通りカンパニュラ恋の一語を灯しけり 灯をともす記憶の底のカンパニュラ八月やヒロシマ・ナガサキ無口なり

さびしき人

風切羽拾つて帰る夜釣かな 八月や黙して語る人の群

みんみんのみんに撃たれてしまいけり かなかなのかなの真下で発狂す かなかなのかなの辺りは日暮れけり 油ぜみ風の詩人になりきれず

風死す

風死すや紡ぎきれなゐ十七音 文机に革命の二字夜の秋 デカダンの漢を逝かす驟雨かな

八月

八月や無口な影となつてをり 空蝉の眼にヒロシマの空澄めり 蝉しぐれ戦は今も放映中