光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2019-01-01から1年間の記事一覧

冬銀河

地の果てに佇つや虚空に冬銀河 夕鶴忌 眞弓の実そのひと粒の重さかな風に色なく腕にふつと抱かるる雁やひとみな水の記憶あり夕鶴の翔ちまた還る花野かな源義忌の泰山木は濡れてをり 曼荼羅の森発光す檀の実月光に化石のごとく彳めり火の海も乾きし海も蚯蚓鳴…

冬日

『罪と罰』傾れる書架や冬日差す

冬の蝶

冬蝶の翅圧し潰す嫉妬かな

「河」12月号 掲載作品

銀河人 無窮なる銀河人(ぎんがびと)なり師も我も 渉るべき河あり秋の天頂に 菊坂の下の帽子屋小鳥来る 詩歌(うた)を慾るいのちありけり源義忌 シネマ「街の灯」撥ねし荻窪灯涼し むきだしのたましひになる夕花野 身の軋むほど抱かれたし雁月夜

枯野

枯野には父の木のあり泣きに来る 長兄 卓司 死去怖いと思ふ人ゐなくなり冬の鵙

小春日

小春日や憑神ならばあつち行け

十一月

十一月錆びた錨を上げてみよ

霜夜

霜の通夜きふにあのこと思ひ出す 過去たちのたち騒ぎゐる霜夜かな

「河」11月号 掲載作品

栗名月 ははひとりかなかなかなのなかかへる 小鳥来るここは親族(うから)の眠る村 今ここにゐるのが私まんじゆさげ 露草のしづけさに母顕ちにけり 父来てゐるか 栗名月は河の上 星空保護区残る螢となりゐたり モザイクになりゆく記憶すいつちよん

草の絮

たんぽぽの絮とぶ空の翳りかな

河誌 10月号 掲載作品

野分へ向かへ 一握の砂より零れゆく晩夏 新涼の月射す書架に黄金(エル)郷(ドラド) 健次忌のsoulの雨となりにけり 十八歳の地図に秋の灯沁みるなり 三十八億年銀河を生きて我ら遇ふ 「わが死後を書けばかならず春怒濤 寺山修司」大いなる葉月残照 生きてゐる …

露草

露草やしづかなる日の母顕てり

曼殊沙華

天界に曼陀羅華この世に曼殊沙華 曼殊沙華の火群に母と見知らぬ子 今ここにゐるのが私まんじゅさげ

摩天楼より音無き喧噪見るや秋

敬老の日

命つてこんなに軽い敬老日

秋思

父の木の葉つぱの火照る秋思かな 満ち足りてどこかが軋む秋思かな

新涼

新涼やオルセー河岸に美の駅舎

赤のまま

正座せし三十路の母や赤のまま

「河」九月号 掲載作品

人のかたち 雲海を凸(つばく)むものの光りけり 天(あま)色(いろ)の空翔けぬけよ夏つばめ 蝉声の沁みる昴の忌なりけり 緑陰を出てまた付ける仮面かな ひぐらしのこゑや戻らぬ日の家族 夕焼けて人のかたちの美しきかな 遠花火すこし遅れて哀しみ来

九月

セプテンバー砂の如くに雲流る

銀河

いのちの緒しづかに銀河まはしけり

露草

露草や漢の保つダンディズム

八月

8月26日は 詩人 田村隆一の忌日 雨男喪の八月の日記閉づ

八月

ハミング・バード喪の八月の蜜を吸ふ

月下美人

母の忌や月下美人の咲き初める

かなかな時雨

ははひとりかなかな時雨帰り来ぬ

銀河

三十八億年銀河を生きて 我ら遇ふ

水澄む

水澄むや明治生まれの母の忌来

花木槿

孤独とはこんなものかも花木槿

夏の果て

タテカンのゲバ文字掠れ夏終はる