光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

大年

年行くや椅子のかたちに時間あり 大年や見知らぬ我を待つてゐる 大年や秘色に濡れし怒涛音 大年の入り日をたたむ水平線 神寂し大年の日の沈みけり 大年のルビンの壷の話しごゑ

白鳥

白鳥のこゑの還りてひと恋し ゆく年の聖地ウルルや黙し佇つ

息白し

雪の夜や風の化石を磨きをり はるかなるものかかえこむ息白し

冬ざるる

貌ひとつなき帽子店冬ざるる 極月や明日を鳴らす非常ベル

ポインセチア

ポインセチア日暮れのカフェを哀しうす 彼方より白鳥のこゑ零れけり 白鳥の夜のこゑ聞く孤独かな

冬林檎

数へ日の一日はJAZZYな夜となれり 冬林檎さびしき歯形光りけり 木枯や荒地に風の化石あり

冬林檎

大焚火して両国に第九鳴る 冬林檎さびしき歯形光りけり 吾を運ぶ方舟捜す冬銀河

歳晩

倚りかかる冬日の壁にある孤独 数へ日の余白の多し備忘録 歳晩や地下街に降り人の海

納骨

数へ日のひと日は兄の骨納め 寒晴やりんりんと立つ楠大樹 冬日差す墓誌に血脈物語

海鼠

戯言の句座の真中や冬ざるる 海鼠いま地球最後の日を見遣る 海鼠噛み非在の神を思ふべし

枯野

枯野往く少女は青きビスケット 残光の少女枯野のひととなる バーの隅占めて枯野のひかりかな

侘助月夜

青猫の過ぎる侘助月夜かな 大焚火時間に断層生れけり 数へ日の敢へ無きひとを父といふ

枯野光

(松下千代氏死して二ヶ月)WOODYにて 止り木のはての紫煙と枯野光 数へ日の止り木にゐてジャズの夜 止り木に指定席ある年の暮

寒月光

一原子一時空なり海鼠噛む 寒月光たましひの辺の一行詩 キリストの目に雪がふり星がふり

冬の暮

タナトスとエロスの出会ふ冬の暮 侘助の日暮れ青猫ゐたりけり 侘助や去勢されたる猫の髭 地のこゑの透ける侘助月夜なり

数へ日

数へ日の父であること捨てざらむ 数へ日の顔に乗せたる蒸タオル 爪をとばして数へ日の父である

風花

風花や降りたことなき無人駅 風花や故郷に我見つめらる 風花のいぶかる空の碧さかな

落葉光

天狼やヒトが密猟されてゐる 無常迅速冴ゆる銀河を渉らむか 踏む音の透きとほりたる落葉光

侘助

侘助や記憶の涯の光る猫 侘助やほどよき距離の父がゐる 侘助が咲けばしんみりしたる距離

一行詩

粗金の鶴極月の水噴けり 鯛焼の左顔はいつも虚ろなり 鯛焼きや避けて通れぬ一行詩 鯛焼きとなることなかれ一行詩