光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

忘れな草

かにかくに尾道恋し春夕焼 首都は今暮春の寂の中にあり 時流れ忘れな草の風流る 春愁やウィルスはいつも傍にゐる 風光る人間もまた遺跡なり

暮春

横須賀の海しづかなる暮春かな

春雷

春雷や白衣出でくるラブホテル

支へあひ花の筏は動かざる 余花白し母恋ふ空となりにけり 花しぐれ季の時空を超ゆるかな

勿忘草

青い歴史は勿忘草が書くだらう 勿忘草少年ジョジョは生きてみる

鬱王

春愁を掬ふ葛西の観覧車 鬱王はぺんぺん草に跪く 花ちらししづかな雨や啄木忌 啄木忌忘れな草の藍かなし コロナ禍のぢつと手をみる啄木忌 「さぼうる」の木椅子二脚が囀れり 旅人の桜は海峡渡りけり

暮春

花万朶映して川の曲がりたる 飛花落花鳴けない鳥の哀しかり 沈黙と虚無に遊ぶや花の下 地球こそノアの箱船かげろへる ウィルス狂ふ暮春私は生きてゐる

「河」4月号 掲載作品

山廬の灯 混沌と生と死のあり二月来る くぢら哭く春のさびしき日なりけり きさらぎの海や細胞分裂音 探梅や呱呱ゆたかなる村に出づ きさらぎの雪嶺まぢかく山廬の灯 虚空より花のこゑある西行忌 はつとして父の木仰ぐ茂吉の忌