2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧
致死量の毒あり花の時雨れけり
毀れないやうに弥生の光脱ぐ
子を産めぬ体にされた猫の恋
花冷えの街にあの日の革命歌
柔らかな恍惚なりし春夕焼
囀りの中のさへづり囀れり
陽炎が人のかたちに降り来たり
達磨図のやうな禿頭冴返る
蜂起には至らず地虫穴を出づ
春分の日の墓場から海見ゆる
亀鳴くや平成といふ端境期
夕焼川春をからめて流れけり
少年に風の花冠や卒業す
春の雨街にタイヤの音匂ふ
春なれや餌台ゆらす鳥のこゑ
叛逆の一字を残し卒業す
父の座に春光あふれゐたりけり
春の闇歩く魚がやつて来る
今年また津波砂漠に雀の子
我は聲なり三月の沖吼ゆる 三月の十一日の息遣ひ
沈黙が語る沈黙三月来
親不孝通りを抜けて卒業す
メビウスの環となりて蛇穴を出づ
春眠といふさざなみに重力波
啓蟄の乗換駅でまごまごす
秘色とは宇宙の孤独すみれ咲く
春愁やゆつくりと書架倒れ来る
沈黙が語る沈黙三月来
冬たんぽぽ 枯れてゆくもののこゑ聞き暖かし 寄鍋やラヴ・ストーリーでも語らふか 通夜寒波たましひに人会ひに来る あけらかんと骨となりける汝に雪 中村家の墓の透き間に 冬たんぽぽ 寒卵つなぐいのちの温みあり しんしんと雪。津津と一行詩