光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧

大年

大年の記憶の鍵のスペアキー 去年今年夢と現の鬩ぎ合ふ 大年の音沈黙へ帰りけり 大年のみな影もちて淋しかり 大年の闇に濃淡ありにけり 大年の髭・鬚・髯を洗ひけり

シクラメン

シクラメン記憶の修羅は薄れけり 在るだけのものに繋がる冬銀河 マザーリング手繰れば記憶冬ざるる

2009年 回顧

三月 黄水仙アビーロードに朝が来る 四月 背信の子にセーターを編みにけり 五月 水が手をさし伸べてゐる立夏かな 六月 短夜のマンハッタンは蒼きジャズ 七月 母の水脈追ふ少年に蝉時雨 八月 サマータイム聴く止まり木の晩夏かな 折鶴の黙降り積もり八月尽 九…

茶の花

年ゆくや窓に貼りつくひとりの灯 暮るる日の父情となりしコートかな 茶の花や湯船に自死を試みる

手袋

手袋の十指に別れの記憶あり 手袋の一指は嘘のかたちなり 試写室の椅子に真赤な手套あり

十二月

風花や鳥語を学ぶ男達 地下街の出口は遥か十二月 寂寥の張り付いてゐる吊り鮟鱇

聖夜

ゆるされて大きもの知る聖夜かな 鐘の音の波に触れたる聖夜かなイブの夜の沈んだ町を横切りぬ 死の形態考えてゐる聖夜かな紅燈の海の凪ぎたる聖夜かな 鉾杉のそびゆる森に聖夜かな洞穴に人安堵する聖夜かな しらじらと天に神ゐる聖夜かな砲声のしばらく止み…

寒月光

寒月光人間の管透けにけり 翼もつ子の泣ゐてをり寒月光 寒月光一人愛せばまた別れ

冬至

漢らの句座に日の差す冬至かな ゆらぎなき一行詩たり冬至の日

「河」

「角川春樹主宰作品」 降誕祭われに囚徒の夕べあり ゆく年の何処より遠い場所にゐる 燗酒や津軽の海鳴り聴きしより 室の花沖へ去りゆく雲ばかり ひとりゆく枯野の涯のカーニバル ゆく年の火の美しき寒さかな

師走

冬空のシュールな青に鳩一羽 ラブラドール人曳いてゆく師走かな 鳥語圏成層圏ぬけ冬銀河

冬林檎

北帰行の汽車の音ある冬林檎 ひとごゑのブルースとなる師走かな 古書店の窓凍りたる神保町

墨田吟行句会

鳩尾に風のぶつかる年の市 そこばかり日向となりし冬の草 聖痕のごとく掌にあり冬もみぢ 冬晴のこころの疼き軋みけり 鯉のひげ落ちてゐたるや池普請 ゆつたりと冬木に充ちる時間あり 裸木の影濃く伸びて空青し

「河」江戸川勉強会

日向ぼこして骨ペンダントなど思ふ/洋子 平明といふ時間あり冬木立/洋子 ドトールに賀状書ゐてるサウスポー/洋子 マンホールの中に落ちれば冬の空/美恵子 奥様の冬の儀式のパックかな/美恵子 カレンダーの裏なにもなし十二月/美恵子 秒針の音迫りくる霜夜か…

冬夕焼

罪深き顔の自画像冬深し ノンちゃんはいま雲に乗る冬夕焼 磁場あれば荒地の何処鶴渡る

虎落笛句会

鶴群(たづむら)の万羽のこゑの天にあり しらじらと神天にゐて聖夜かな 冬怒涛目瞑ればある青さかな 凍蝶のかたちの時間解れけり 冬深し手の甲にある火傷痕

鰤起し

たおやかに水鳥の頸伸びにけり 鰤起しその日戦争起こりけり

歳晩

歳晩や塵つもりたるひげのうへ ゆつたりと日を浴びている落葉かな

阿修羅

寒月光阿修羅の髪を束ねをり さびしきは阿修羅の眉の冬日かな たくましき脚もて阿修羅冬籠

裸木

轢死てふ自殺の増えし十二月 囚人と知る極月の高層街 裸木の一木光る交差点

冬日  

いとほしき遊行の足の冬日かな 冬の日の南回帰線ゆるぎなし南米の日本の飛び地冬日差す 十二月八日あなたの一番美しきとき

寒月光

鳩尾の私語変色す十二月 寒月光人間の管落ちにけり

鶴渡る

天山を越えて淋しき鶴となる 鶴渡る天山その日淋しかりはろばろと天山南路鶴渡る

木枯し

木枯しや地球傾く飢餓の夜 十二月修羅街に聴くジャズ激し 極月やビリー・ホリディのジャズ哀し

冬の虹

たつた一度触れたるものに冬の虹 極月や面影似たるひとに遇ふ 脛の傷痛みだしたる十二月

極月

枯蔓や孤独な壁を這いのぼる アスファルト醒めゆく朝の落葉かな 極月や母の寡黙な海にゐる

十二月

悲しみの底へ下り立つ十二月 裸木の影に命の力あり ラグビーの果てて神宮火の匂ひ