2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧
うす青き闇が広ごり月天心
銀紙の数多鶴翔け八月尽
影のなき都会に生きる残暑かな
晩夏かなモディリアーニの藍深し
幾たびも孕む猫ゐて星月夜
生きるとは澱むことなり夜の桃
片仮名の街が発酵する残暑
抒情詩の蟬しぐれありこのくには
アロハ着て不死の国へと参らうか
慟哭の灯りし螢袋かな
万歳と云うて向日葵枯れにけり 海底に星座の移る敗戦日春樹主宰作品 ・向日葵や父の戦後のはるかなり ・白鳥忌華厳の水の流れゆく ・追ひつけぬ時間のごとし処暑の椅子 ・デジャ・ビュの駅に晩夏の雨が降る ・処暑の椅子ひとりの午後に深くゐる ・生きるとは…
メロン食ぶ男と女五分と五分
少年の恋葬むるか蟻の列
笑ふべき時代と知りし敗戦日 折り畳む濃い翳ばかり終戦日 真赤な水飲んで八月一五日 終戦日エロスを孕む風吹けり 影さへも奪われてをり敗戦日 終戦日万歳コーラス聞こえけり
真赤な血詰まる袋となり晩夏
緩緩と水の上ゆく蜻蛉かな
今生きることは幻さるすべり
行く夏の螺旋階段駆け上る
涼しさは寂しさともいふ夏の月
ヒロシマの空にびつしり黒き蝶 出口なき海に八月嗚咽せり ナガサキの空はイエスの色たりし 原爆忌遠景となる海がある
炎天や死の順番の模糊とあり
八月の硬き扉をひきにけり
刻めぬ時間革命があかんべしてる浮いてこい 時計では刻めぬ時間かたつむり 薄荷飴甞めて父の日過ごしけり 父の日といふ平凡な一日かな 父の日の闇からネガを引き抜けり 孑孑や未来の底にぶら下がる