光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

十一月

海見ぬ間十一月の逝きにけり 冬夕焼雲の上なる雲のなし かなしみの風切羽の鶴来る 「パタゴニア紀行」 閉ざされし幾千年の時在れば我は対峙すイタリア氷河 乳白に青さ抱きて迫りくるロマンシェ氷河の滝に音無く 迫りくる氷河の端の蒼き滝無音の中に時刻みを…

冬の鳶

もうひと遊びして行かん冬銀河 一木に時間の見える神無月 大いなる丸を描きたり冬の鳶

ラグビー

ラガーらのぶつかり合つて進みけり 枯野行きバスに放浪聖家族 しんしんと魚族(うろくづ)眠る冬銀河

返り花

神さまの死角を埋めて返り花 胸中の火の濡れてゐる余り月 神遊ぶ時間の海の冬日かな

勤労感謝の日

捨て猫を拾ふ勤労感謝の日 小松菜のみどりのひかり新嘗祭 覚えなきやけど勤労感謝の日

冬ざれ

冬ざれや見たことのある句に出遭ふ 水鳥の翔ちて孤独な水となり 帰り花ふたつみつある斎庭かな

寒鴉

ボジョレヌーボー色気の如き光かな 天山の鶴が手ぶらでやつて来る 寒鴉まじめな顔で啼きにけり

ショートストーリー「手紙」

戯れに手作りの句集を編んで、親しい昔からの友人へ送呈した。ある日、次のような手紙がある人から届いた。Nさん。句集「道しるべ」を見せていただき、ありがとうございます。私は俳句の「は」の字もわからない身です。 たった十七文字の中に世界を読み取り…

雪催

雪催笑ふ警官無口なり 銃殺の朝までゐたる雪女郎 湯豆腐や明日の幸せ疑わず

時雨

九分九厘までの忘却しぐれけり モカ珈琲かくまでにがき時雨かな 沈黙も好きな詩なり夕時雨

鶴渡る

青空に孤愁零して鶴来る 鶴渡る天山その日なほ淋し 楼蘭の襞なす砂や冬銀河

枯蓮 11・11・11・11

枯蓮に雨来て身ぬち濡らしけり 枯蓮の向かう修羅街けぶらへり地のはてのこゑ冴えわたる午後であり林翔 森繁久弥 逝きにけり

冬林檎

冬の虹言わぬが花の玉手箱 新宿の甍の上の冬の鳶 冬林檎ふたつ寄り添ひ売られけり

実万両

修羅街の路地の入り口実万両 盲目の秋逝かしけり歌舞伎町 鳳仙花弾けて淋し日暮かな 幸せを計る物差し七五三 遠ざかる佐渡は淋しき冬銀河 その町に生まれて育ちとろろ汁 はろばろと天山南路鶴渡る

立冬

不意打ちに詩がやって来て冬立ちぬ てのひらに覚え無き傷冬に入る たましひの聴耳立てる今朝の冬

行く秋

行く秋の水脈の遥けき水惑星 青ざめし自由の女神秋逝かすたましひの色の賑ひ菊人形

河 

角川春樹主宰 作品 荒涼と餓ゆる日のあり鵙の贄 ゆく秋や水のごとくに雲ながれ ゆく秋のものみな遠くなりにけり 晩秋のひかりのなかに瞑るべし 天狼や約束の地に誰もゐず 雁落ちて冷え俄かなり源義忌