光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2022-01-01から1年間の記事一覧

花のこゑ

「花のこゑ」 人道回廊抜けて初蝶海へ消ゆ ヴィーナスの欠けた腕や春の潮 赤く舌延ばす入日や三鬼の忌 沈黙し黙秘したまま咲くさくら 花明かりさびしき街の底にゐて 春暁にたましひ遊びすぎたるか 逃水や助手席の吾子遠かりき

春のこゑ

立春の雨うつくしき無縁坂 標なき辻に佇ちゐて涅槃西風 虚空より花のようなる春の雪 残雪や翔ちゆく群の残すこゑ やはらかき水のおもてにみづあふる あらあらと黙深き闇ふきのたう 春雷や奇跡の如く我ら遭ふ

冬山椒

水鳥の黙の水脈より日暮れけり 詩の荒野吼ゆる狼ゐたりけり ふぐりなき狼もゐて咆哮す おほかみのこゑ谺する夜のふかさ 火のごとき孤独を焚べる夜の暖炉 君逝きてなんとつまらぬ冬の薔薇 報はれぬ生き方もあり冬山椒

猫達に送られ向かふ初句会 ジュヴゼーム今はジュテーム春近し 百万回生きた貌して竈猫

大歳の闇にこゑあり天動く うぶすなの初日浴ぶれば生きたしよ 初富士やほろびゆくもの見すゑをり 日溜まりの音なき波の浮寝鳥 そこばかり光こぼれて福寿草