2012-12-01から1ヶ月間の記事一覧
搾りだす記憶の光る去年今年
あきらかに今は戦前枇杷の花
化け猫の出さうな里の狸汁
裸木のすべてを語りつくしたる
海鼠疾走愛のグラスは壊れさう魂にぶちあたりたる海鼠かな
ストーブに火の恍惚を焼べにけりストーブや葬る煙見てゐたり
狼を光の檻に飼うてみた
この星の山河せつなき聖夜かな レノンの灯ほのめく聖樹に夜の深さ 聖樹立ちマンハッタンに森匂ふ老人があかんべをする聖夜劇 止り木に彼のイヴの夜の父がゐるしつかりと生きて聖夜の鐘を聴く 星よりも大き鐘ある聖樹かな
神様の死角にふたつ返り花 恋したる合歓の裸木告白す
寒立馬嘶き詩の屹立す寒月光廣野は青き海となる
平等や全てを埋めて雪降るか シナリオのあらすじ知らぬ枇杷の花マヤ暦の大きな始め冬銀河
反骨で無頼は淋し冬桜
あと二つなさねばならぬ年忘
瑕ひとつなき寒晴れの向かうから
極月の監視カメラの街にゐる
ポスターの吼える男や横時雨
悲しみに時系列なく年詰る
義士の日の白き時間を食いつぶす
学び舎に昭和の冬の日の既視感(デ・ジャビュ)
スノードーム過去の時間に雪降らせ
風呂吹きや指先にある赤ワイン
十二月追はれて追はれ逃げる人
かみさまの死角を埋め返り花
十二月八日を迎へ淋しかり マンハッタンに箱船の着くレノンの忌 レノン忌のダコタ・ハウスに夕餉の灯
枯野より全き老人跳び出せり
いにしへの光の中へ冬の蜂
肺青く染むる冬空仰ぎたり
天秤のつり合ふ距離に冬銀河
底冷えやはらわたに沁む笛の音
冬薔薇の仄かに青しひとりの夜