光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

雁渡る

月今宵澄雄の恋し湖澄めり 雁がねや澄みきつてゐる鳰の海 雁渡る打出の浜や車椅子

檻の外に月浴びてゐる芒かな 地図のなき旅つづけをり天の川 威し銃見えざるものを撃ち落す

秋暑

木の椅子に聖書と秋暑置かれけり 磔像に黒き秋思のありにけり 荊冠に秋暑いただく金曜日

芭蕉

夕暮れに音叉となれる芭蕉かな 夏果ての砂の城から翔ちしもの 闇色のごみ袋より小鳥来る

たぢから句会

席題「在」 不在証明(アリバイ)はすれ違ひたる秋の風 原爆忌不在の神を詰りけり 銀漢へ寂しき星を出帆す 八月の果ての恋愛白書かな

処暑

処暑の日のなんじゃもんじゃの木に泪 神楽坂界隈処暑の無人坂 われにあと幾歳巡る処暑の日よ

稲妻

蝉時雨人っ子ひとりゐぬ真昼 方船や月の樹海に漂着す 稲妻や夜を眠らず歌舞伎町

白桃

白桃や根の国に水奔りたる ひぐらしや沖に砲声聞こえたり かなかなや祀りの花を買い求む

花野

夕さりの峠や零余子零れ落つ 黄昏の海が花野につづきけり 八月の水平線へ漕ぎだしぬ

終戦日

敗戦日鳥威より鳥翔てり 青空の朝に髭剃る終戦日 終戦日色つきのジャズ溢れだす 敗戦の日はワンモアキスというバーに おごそかな渇き始まる終戦日 スクラムを組んで尿する終戦日 足許をうなぎの泳ぐ終戦日

月光

月光を浴び透明に近づけり 月浴びて寂しき星を泳ぎけり 何處から来何處へ行くのか天の川

零余子

海鳴りに応へ零余子の零れ落つ 手に採れば己が貌ある零余子かな 匍匐する時代に生きてぬかご飯

赤とんぼ

独りならこの指止まれ赤とんぼ 吹雪かと思ふ秋津の静寂かな とんぼうの生きる音ある草間かな

八月九日

観覧車から眺めゐるきのこ雲 ナガサキの黙深き日の水を飲む ナガサキや沖に白帆の異国船 ナガサキの空が遊び場赤とんぼ

八月六日

八月六日神に加へし火刑かな ヒロシマや司祭の黒衣燃え上がる 八月六日無韻の黙が広ごりぬ 透明な影立ち上がる広島忌

夾竹桃

街中が眠ってをりぬ夾竹桃 薄埃白銀返す夾竹桃 向日葵の花芯に昨夜が焦げてをり

扇風機

扇風機胸の赤糸絡ませる 遠花火想ひの響きありにけり

健次忌の寂しき星にジャズ流る 特選 止り木に朝が来てゐる健次の忌 秀逸 アルゼンチンタンゴ真赤な闘魚ゐる 秀逸春樹主宰作品 鳴りっぱなしの赤い電話やヒロシマ忌 エルヴィス忌晩夏の雨が降りにけり ナガサキや神は沈黙してをりぬ バーボンの日暮の色や健次…