2019-01-01から1年間の記事一覧
ファド洩るるバルの坂より天の川
父の風立つ敗戦の日なりけり 偶々を享受して生き敗戦日 船載せて大川のあり敗戦日
雑踏に渦の目のごとゐる残暑
始祖鳥の翼涼しくひらきたり
八月の墓標となりし海鳴けよ
葡萄ひと房夕日あつめてゐたりけり
白夏の去りゆく尻尾ふと見たり
白桃の尻のあたりにある平和
秋立つや星の生死にかかわらず
幻の孫は三人さるすべり
炎帝や被爆電車がすれ違ふ
夏の果て駱駝のあくび見てをりぬ
甲冑を脱ぎ捨て蝉の唄ひけり
空蝉にまだ残りたるみどりの夜
親不知・子不知泣くや卯波の夜 陸離たる空へ泰山木咲(ひら)く 掌を解けばさびしさ残る父の日よ 虚しさに飽きてしまひし闘魚の死 生きたし。時の余白に夏つばめ はまひるがほ少女沖より濡れ来たり カルチェラタンに喪の六月をまた老ゆる
向日葵やイカロス遠き空を墜つ
残像のまだ炎えてゐる戦後かな
すすり泣く蟬の時雨もなかりけり
星空に発ち雲海の嶺に立つ
葛飾の風の匂ひや裸の子
少女らが屯してゐる炎暑かな
万緑の水へたましひ遊ばせり
青年死して雲海の底かがやけり
豆の気持ちはこんなものかもハンモック
夕焼けて人のかたちの美しきかな
青年の死こそ美し晩夏雨
原発に潜む神あり青螢
絵日傘をぱつと差せない女かな
黒揚羽アラビア文字のごと来たり
愛情の押し売り西瓜大きく切る