地の果てに佇つや虚空に冬銀河
夕鶴忌
眞弓の実そのひと粒の重さかな
風に色なく腕にふつと抱かるる
雁やひとみな水の記憶あり
夕鶴の翔ちまた還る花野かな
源義忌の泰山木は濡れてをり
曼荼羅の森発光す檀の実
月光に化石のごとく彳めり
火の海も乾きし海も蚯蚓鳴く
雁渡るその奥にある戦後かな
秋天へ戦艦大和水脈曳けり
うすれゆく時間ありけり柿の天
野分晴れ一樹に水のこゑのあり
椋鳥に無防備都市の午餐かな
ジャズ奏で秋の時間を軋ませり
五百羅漢の上秋風の吹きゆけり
あきらかに我が額めがけ木の実降る
木犀の時間の帯に日暮れけり
木偶となり今日を生きをりちちろ虫
寂寞と銀河の果てに種子蒔けり
夕鶴は秋の星座となりゐたり