2012-01-01から1年間の記事一覧
十二月胸の白帆を張り直す
ときどきは火のやうに燃ゆ冬紅葉
戦前と言へば言へさう冬紅葉
沢庵を噛みて言はざる一語あり
天空の落葉焚かれてゐたりけり
古稀などは洟垂れ小僧冬北斗
龍の玉遥けきものにいのちの緒
湯豆腐やさびしさ軋む雨の音
だんだんと己透けゆく冬紅葉
一行詩冬日満つれば生まれけり
おほかみのたましひ残る祖国かな
名誉欲のみ育ちたる枯野ゆく倚りかかる冬日の壁にある昭和
幸せな時間の見えぬ時雨かな
ビロードの華麗な柩冬の月
ボージョレ・ヌーボーうれひの色を溢しけり
小春空なりし田園調布駅
冬暖か思い出したる一語あり
枯れ色の庭にちょこんと帰り花
温もりの母のこゑする石路の花
禿頭はすこしお洒落か冬の鵙
花ダチュラ雌伏の至福知らぬひと
闇あれば海鼠の命かとおもふ
立冬のこころは水を潜りけり
ガーゴイル十一月の雨吐けり
いつまでも芒みてゐる赤い靴
よき顔の安野光雅文化の日なんにでも「文化」くっつく文化の日
思い切り帆の向き変へて十一月
菊人形虚実の距離のありにけり
身の芯のいよよ透けゆき十月尽
草紅葉埴輪の馬の嘶けり