2013-01-01から1年間の記事一覧
一海に頬まだ丸き秋燕
ああ檸檬望郷なんて無き我ら
月光の射して紫煙のピアノバー
ふらんす堂文庫一冊秋の夜
月光の棺へ小鳥来てをりぬ
糸瓜みて悪女を思ふ子規忌かな
月光の貨車すれ違ふ駅にゐる
天高し都会の色に出会ひけり
飛行機の野分の空に響もせり
殺がれたる耳を花野に拾ひけり
灯の点り初める路地裏酔芙蓉
芭蕉葉を揺らす昭和の風のあり
蜻蛉来るまるであなたのやうに来る
花野風さびしさ我をとほり過ぐ
新涼のふらんす堂の新句集
葡萄牙 薔薇闌ける薔薇の向かうに葡萄牙 薔薇の雨永遠の夢みし酔(ゑ)ひもせず 荻窪の駅の灯りも梅雨に入る あぢさゐのうしろは海の暮れてをり 四葩より四葩へ暮れる一日かな 峰雲や詩は垂直の声ならむ
本牧の夜はジャズ流れ八月尽
子の沓の耳のごとくにある晩夏
毀れないやうに晩夏の光脱ぐ
風景の周囲がめくれ八月尽
人鳴りの聞こゆ新宿秋暑し
落蟬の澄みたる眼拾ひけり
沖はるか一日みてゐる処暑の椅子
眸の中に無限の海と晩夏光
夢さめてさびしき花の烏瓜
新秋や塗り替へられし朱の鳥居
傍らを銀河流れて淋しいぜ バイクの日俳句の日なり秋桜
妬心とは峠にゆるる夏薊
身の壺の水爽やかに応へけり
自転車の前と後ろに子を乗せて今朝も眩しく若き母過ぐまだ青きトマトを齧る少年は鼻のニキビの汗を拭ひぬ