2013-01-01から1年間の記事一覧
丹田に力こめたり今朝の冬
足の裏覗き込みたる秋の暮
許し請ふことなく生まれ雁渡し
文化の日我が猫プーとポポ撫づる
ははのこゑする柊の花あかり
いつぽんの道灼けてゐる敗戦日 芙蓉咲く健次の来たる気配かな 百日紅しんかんたるや白鳥忌 沖はるか一日みてゐる処暑の椅子 名の月や澄雄の恋ひし湖澄めり 秋暁や水になりゆく鳥のこゑ
天の扉を閉じ忘れゐて雁渡し
充実の色でありけり石榴の実
天高しことばはみんな嘘つけり
秋の蝶光の扉開きけり
土の香のこみあげてくる秋しぐれ
哀れかな少年の日の泡立ち草
夕鶴を想ふひとりの夜食かな
稲滓火の向かう昭和の日暮かな
指切りの別れや白き鳳仙花
青春の蹉跌のありし歌舞伎町いづこ曲がるも月の路地あり 百万回生きた貌する猫の眼が我をみつめて欠伸をしたり
秋の虹飢餓海峡に架かりけり
もう一度母に逢ひたし秋桜
躁・鬱の野分となれり吾の孤島
曼珠沙華許しあふかに野辺海辺
始祖鳥の羅針盤つけ鳥渡る
死の死など問うなと秋のつばくらめ
秋高し見えざるものと交感す
人間といふ淋しさに小鳥来る
絞首刑執行の朝小鳥来る
八月 八月のまつすぐにくる蟻の列 夕焼けのある星ゐて原爆忌 母の水脈追ふ少年に蝉時雨 健次忌の晩夏の雨に打たれけり 黄金街ジャズに暮れゆく健次の忌 健次忌の雨を熱気と思ひけり
倒れてもまた立ち上がる秋桜
真先に子らに十月来てゐたり
蝶番ひとつ外れて九月尽
暁闇のつくづく深し秋のこゑ