2014-01-01から1年間の記事一覧
六月や水平線の入れ替はる はつなつの帽子は海へ飛びたがる 山田みづえ
伸び縮みしたき世界よ時計草
孤島 花あればたましひふるへゐたりけり ひとといふ孤島に落花しきりなる 午後四時の裏側にゐる春愁 母を訪ひ桜時雨のなか帰る つかのまの人棲む星や花夕焼 花の日の暮れきる海のありにけり
六月一日一匹の蟻みてゐたり
軍靴近づく薔薇回廊の午後なりき
半地下のカレー屋に入る走り梅雨
柿の花身近に美しき死がありぬ
書肆ぬける風に五月の匂ひあり
躑躅山髑髏となりし夕まぐれ 無患子のからからころと別れよか 村重番
母の日のかひな二本に抱かるる
切なさやダンディズムから夏は来ぬ
子供らのこゑ一列に桜の実
魚籠提げて子どもらの来るこどもの日
あかんぼのほのかに甘し聖五月
逝く春の山河に青き暮色あり
ダイナモのやうに五月の来てゐたり
少年の黙礼深し四月尽
死者たちに生かされてゐて豆の花
逝く春の未完の沖に光あり
こめかみにふるるものあり花の雨
永き日や番矢の詩と櫂の詩
逃げ水にA滑走路浮かびけり花びらを踏みて異国へ赴任せり
花暮れてやうやう星座下り来たり
花の世に四肢を晒してさびしかり
花時のころを上野にゐてひとり
たんぽぽや記憶の底を風通る
修羅街の夕空美しく三月尽
江戸川も花の時雨に暮れゐたり
田園調布春のお辞儀で再会す
ひたひたと軍靴近づきくる春夜