光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2009-01-01から1年間の記事一覧

返り花

神さまの死角を埋めて返り花 胸中の火の濡れてゐる余り月 神遊ぶ時間の海の冬日かな

勤労感謝の日

捨て猫を拾ふ勤労感謝の日 小松菜のみどりのひかり新嘗祭 覚えなきやけど勤労感謝の日

冬ざれ

冬ざれや見たことのある句に出遭ふ 水鳥の翔ちて孤独な水となり 帰り花ふたつみつある斎庭かな

寒鴉

ボジョレヌーボー色気の如き光かな 天山の鶴が手ぶらでやつて来る 寒鴉まじめな顔で啼きにけり

ショートストーリー「手紙」

戯れに手作りの句集を編んで、親しい昔からの友人へ送呈した。ある日、次のような手紙がある人から届いた。Nさん。句集「道しるべ」を見せていただき、ありがとうございます。私は俳句の「は」の字もわからない身です。 たった十七文字の中に世界を読み取り…

雪催

雪催笑ふ警官無口なり 銃殺の朝までゐたる雪女郎 湯豆腐や明日の幸せ疑わず

時雨

九分九厘までの忘却しぐれけり モカ珈琲かくまでにがき時雨かな 沈黙も好きな詩なり夕時雨

鶴渡る

青空に孤愁零して鶴来る 鶴渡る天山その日なほ淋し 楼蘭の襞なす砂や冬銀河

枯蓮 11・11・11・11

枯蓮に雨来て身ぬち濡らしけり 枯蓮の向かう修羅街けぶらへり地のはてのこゑ冴えわたる午後であり林翔 森繁久弥 逝きにけり

冬林檎

冬の虹言わぬが花の玉手箱 新宿の甍の上の冬の鳶 冬林檎ふたつ寄り添ひ売られけり

実万両

修羅街の路地の入り口実万両 盲目の秋逝かしけり歌舞伎町 鳳仙花弾けて淋し日暮かな 幸せを計る物差し七五三 遠ざかる佐渡は淋しき冬銀河 その町に生まれて育ちとろろ汁 はろばろと天山南路鶴渡る

立冬

不意打ちに詩がやって来て冬立ちぬ てのひらに覚え無き傷冬に入る たましひの聴耳立てる今朝の冬

行く秋

行く秋の水脈の遥けき水惑星 青ざめし自由の女神秋逝かすたましひの色の賑ひ菊人形

河 

角川春樹主宰 作品 荒涼と餓ゆる日のあり鵙の贄 ゆく秋や水のごとくに雲ながれ ゆく秋のものみな遠くなりにけり 晩秋のひかりのなかに瞑るべし 天狼や約束の地に誰もゐず 雁落ちて冷え俄かなり源義忌

とろろ汁

この家に生まれて育ちとろろ汁 後戻りできぬ跳ね橋秋澄めり 晩秋の道に羊と山羊と我

晩秋

手のひらに怯えてありぬ青葡萄 毬栗や未知のけものの如くあり 秋暁や踏ん張つて漕ぐ配達夫晩秋の遥けしこゑの水にあり 紅葉して摩天楼の空青くあり

色鳥来る

膝小僧抱へて萩のひと夜かな 肉体と思想のはざ間色鳥来 行く秋や二重螺旋のいのちの緒

小鳥来る

爽やかや不意打ちにくる詩ひとつ 根の国と銀河の吾は回遊魚 足首に薔薇の刺青小鳥来る

漢の句会(たぢから句会)

晩秋やタンゴ踊れば二十五時 稲妻や盲導犬の耳照らす 曼珠沙華母につながるひと集ふ 我が影と遊び呆けて秋の暮

笑っていいとも

秋闌る笑っていいともお前なら CMの後ろの正面秋真昼 藤村も本名春樹山椒の実

墨田句会 幻戯山房にて

行く秋や子犬の両眼濡れそぼつ 深秋の飾られてゐるピアノかな 再会は色無き風の中であり 晩秋の濡れ羽色の帽子かな 透明な球体延ばし鳥渡る ひと遊びして銀漢へ帰りけりラ・フランス過去の女の如くあり

稲光

ひとり夜のブログ更新色鳥来 血脈のどこかどすんと稲光木曜の秋の鍵穴日暮れけり

鉦叩

ちちろ鳴く闇に火色の時間あり 寂しさはけふという日の鉦叩 落ちる音なにかと思ふ良夜かな

ラ・フランス

ラ・フランス過去の一日の如くあり 愛憎のあはひにしばし初しぐれ スカベラの動きだしたる初時雨

良夜

日の匂い柩に詰めて良夜かな 逝く人を彼の日に悼む良夜かな 降り積むる月光踊る良夜かな曼珠沙華寡黙なひとの列にゐる 曼珠沙華母につながるひと集ふ 言い訳に時間割く夜の野分かな

月の船

名月やふたりで越へる修羅の壁 ひと遊びしたから乗らう月の船 星飛んでたかが俳句と思ひけり

月の道

秋の蝶記憶の海へ堕ちにけり 一湾に月の道あり渡りきる 光年の銀河の涯を漂へり

稲妻

稲妻や脳の地平に摩天楼 曼珠沙華恥骨に磁場のありにけり 竹林が詩人となつて水澄めり

国分寺吟行

カルメンの如く身を反り曼珠沙華 湧き水を使ふ生活や花梨の実 縄文の水のこゑあり竹の春(稲・机・穴・秋燕・緑読み込み) 稲の香や父の記憶のない家庭 文机に革命の文字長き夜 金風の通り抜けたる鼻の穴 秋燕や昭和の母が泣きじゃくる 緑陰に死ぬ逝くひとの…

水の秋

櫂のない船団の行く水の秋 月夜茸わが方舟の出ずる闇秋澄めり古里の山畦の道