光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

2010-01-01から1年間の記事一覧

十一月

小鳥来て欅大樹に溺れけり 沖を見るただそれだけの十一月 秘色とも違ふ色あり竜の玉

冬物語

黙祷やいつもの席に秋のこゑ 秋天へ天使の言葉置き逝けり ひと去りて冬物語始まりぬ

行く秋

行く秋や秘色を宿す水のこゑ 行く秋の蔵の窓より海鳴りす修羅棲みて泰山木の実は紅し

木守柿

まほろばの天に鷹の座思ひけり 木守柿遠嶺に夜の来てゐたり ジーパンの穴から垂るる銀河の尾 秋風や父似の石を拾ひたる**悼・松下千代先生** 紅葉谿仰ぎて千代の深煙草/広治 錦秋の山河逍遥千代逝けり/広治 時雨るるや手にぬくもりの言葉あり/久美子 (…

泰山木の実

瞬きの距離の銀河や生れ還る 秋逝くや秘色を宿す湖のあり 修羅赤く泰山木の実と化せり

木の実独楽

死んでゆくひとの身勝手茶立虫 桐一葉少しジョークが過ぎないか 時間軸の涯に止まらぬ木の実独楽

秋薔薇

もう来ないつもりの神社木の実降る 狐穴に詰りきつたる秋思かな 秋薔薇や飢えたるパリは燃えてゐるか 秋うらら舌がゆつくり回りだす*松下千代先生を悼む 千代さんを酔わせた酒を悔ゐて冬

行く秋

冬近し追い抜いて行くピンヒール 行く秋の水黒々とウナギの背 行く秋や土蔵の梁の黒光り

葉鶏頭

癒されるすべなき孤独葉鶏頭 雁渡る遠き色なす日暮かな 月天心魂の時間となりにけり

木の実降る

ほの紅き萩のいのちに触れにけり あきらかに我が肩めがけ木の実降る 萩咲くや赤き灯のトリスバー

秋桜

秋晴れの一樹に水のこゑのあり 遥かより風届きけり秋桜 秋淋しぽんと抜けたるコルク栓

月の船

荒海や寂しき月の航海す 荒海の暗さほのかや月の船 水底に月輝きて沈みけり

秋思

食卓に家族四人の秋思かな 四人家族の秋思を皿に盛りにけり 餓えた子や赤い羽根より赤い靴

運動会

運動会走つて走つて独りなり 運動会我も家族として走る 運動会ほどよき日差しありにけり ビー玉の中に真青な運動会 もう家族揃ふことなき秋の暮

長き夜

長き夜の異界へ続くテント劇 秋驟雨ふたりの女絡みけり 秋思かなジンタ流るるサーカス団 落とし前つける十指の秋思かな サンドバギー走る砂丘や秋の暮

曼珠沙華

過去未来貫いて咲く曼珠沙華 曼珠沙華矢切の渡しまで燃ゆる 曼珠沙華地底にきつと火山脈

秋の暮

さぼうるの木椅子の軋む秋の暮 母の水脈遥かに見ゆる秋夕焼

赤い羽根

葬送の雨より帰り茸汁 少年の微熱かがよふ赤い羽根

銀河

萩咲くや癒す術なき孤独あり 日輪の海に溶けたる九月尽 月浴びて大山椒魚の動かざる 銀河系遥か遥遥雁渡る

たぢから句会

松茸や真砂女の店の残り客 運動会ひるまの月がでてゐたり 方舟の碇を下ろす良夜かな

秋思

序の舞の扇にありし秋思かな 夜の底に襤褸の寝てゐる秋思かな 秋淋しアンクルトリス傍にゐて

良夜

独りならとんぼうとんぼ肩に来よ 止り木にアンクルトリスゐる良夜 一木の影にこゑある良夜かな

月光

月光や襤褸の寝てゐる夜の底 月映るさびしき水に顔洗ふ 月光に重さありけり萩乱る

日暮るれば萩のトンネル語りだす へびうりや草食系の男子来る 公園にひと待つ時間秋の蝉 こゑ掛けて薄細工を褒めにけり

黒葡萄

黒葡萄食めば流沙の音がする 空ろなる一樹影ある良夜かな

銀漢

銀漢や只過去・未来あるばかり エルヴィス忌砂の如くに雲流れ 桃啜る我が血脈を辿りつつ

花野

茸山微量の毒を醸しをり 道あるがままに花野を歩みたり 花野よりみぬ世のわれをみてゐたり

啄木鳥

啄木鳥や詩嚢静かに満ちにけり 楠の影にこゑある良夜かな 桃啜る我が血脈を辿りつつ

赤とんぼ

赤とんぼひと通るたび肩に触る まつさらな時間もありし実南天 いま触れし秋風に身を任せけり

柘榴

ワシコフの落とし忘れた柘榴かな 大鳥居潜れば萩の径であり すれ違ふ人みな過客萩の叢