光声の徒然日記

十七音で日々を徒然なるままに記す

ひと遊び 30句

   ひと遊び
         
梅白し亀の背中を蹴つてみる
二ン月の貌もつ石のありにけり
春暁の母の乳房に触れにけり
浅き春たぷたぷ鳴りし舟溜り
入り彼岸流れゆくものとどまらず
刻を積む砂時計にも春愁
桜人日暮の迷路彷徨す
麦秋無人駅から日暮れけり
竹の子の一気に山を駆け下る
悲しみの色紫陽花の海にあり

炎天やいのちの時間の中歩く
嘘つきの僧の足裏毛虫這ふ
サマー・タイム聴く止まり木の晩夏かな
銀漢や父の遺せし糸電話
花野よりみぬ世のわれをみてゐたり
一仕事終えて銀河の畔なり
口すぼめ何か言いたげ石榴の実
大花野迷路となりし日暮かな
橋ふたつ濡らす時雨を歩きけり
冴ゆる夜はアップル・パパイア欲る舌よ

水の声響き合うてる冬木かな
冬の夜や暗転のまま舞台跳ね
子の修羅を他人ごとにみて冬終る
鳥帰る無音の沖に緋のタンカー
仏像に湯中りしたる遍路かな
かの世より手紙の届く抱卵期
ひとりてふ鳥の飛び交ふ修司の忌
囀りや川を隔てて共鳴す
ひと遊びして彼岸へと立ちにけり
雲海に四月の鯨泳ぎけり