2021-03-28 継ぎ当て 神田カルチェラタン古書肆の森に日脚伸ぶ 継ぎ当ての昭和を生きて針供養 相聞と挽歌さへづるなかあゆむ 春光にいのちひとつを抱きけり 生きるとは死者思ふこと雲に鳥 すかんぽや胸の奥処に父のこゑ わらび餅呼んでゐるのは母だらう
2021-02-23 生きる おほかみへ捧げよ孤独なる挽歌 うぶすなの初日浴びれば生きたしよ 生きて喰ふ働く人の二日かな 母だけを思ふ日であり七日粥 湯豆腐や二人になつて知る孤独 泣いてからふらりとかへる雪をんな 自由とは孤高のことぞ天の鷹
2021-02-08 泣きに来る 枯野には父の木のあり泣きに来る 裸木となりて光を纏ひけり 寒禽の空を切り裂きわつと翔つ 永遠の現在形を生きて 冬 いちどだけふれたるものに冬の虹 だれにでも抱かれる猫とゐる霜夜 冬銀河挟みあかんべしたる夢