2021-12-12 詩のつばさ あかつきの闇に拾ひし月の殻 幾星霜生き延びてきて草の花 花野から荒地へ向かふ母若し むきだしのたましひとなる夕花野 黄落のひかりに溺れてしまひけり 詩のつばさ持ちて渉らむ銀河かな 重力波たゆたふ銀河より銀河
2021-11-01 「追憶」 人類の午後は失語し秋のこゑ 生きるなら心を燃やせ曼殊沙華 追憶の中に息づく紫苑かな 天界に紫苑咲きしと母のこゑ 追憶が追憶を生む秋の雨 ひたむきな曼殊沙華ふと疎ましき 風の奥かなかなしぐれ遠ざかる
2021-10-10 沈黙の水脈 蝉殻を脱ぎ八日目を生きんとす 今生にしがみつきたる蝉の殻 八月の金魚は口で思考せり 置き去りにされし昭和の八月よ 手榴弾のごとく少年石榴投げ 戦乱にカラシニコフと石榴の実 沈黙の水脈に数多の石榴浮く